縮小都市データベース

アッシャーズレーベン(Aschersleben)

龍谷大学政策学部 服部圭郎

アッシャーズレーベンはザクセンアンハルト州にある都市でマグデブルクから南に50キロメートル、ハレから北西に50キロメートルの場所に位置している。その歴史は古く、ザクセンアンハルト州では最古の都市で、753年に既に記録に残されている。1266年には都市として自治が認められ、1322年には市壁がつくられた。この壁は現在でも残っている。1426年にはハンザ同盟にも加入する。周辺の土地が農業に適しており、特にホップの生産が盛んであった。1815年にはプロシアに属することになる。第二次世界大戦中は戦闘機ジュンカースの部品製造工場があったので、頻繁に爆撃を受け、市街地の2割ほどが破壊された。ただ、歴史ある旧市街地は被害を免れ、ロマネスク様式、ゴシック様式、ルネッサンス様式、バロック様式といった多様な様式の建築が今日にまで保全されている。 1990年に東西ドイツが再統一されるとザクセンアンハルト州に属することになった。2008年には周辺の3つの自治体が合併され、2009年にはさらに4つの自治体が合併された。さらに2010年にはもう一つの自治体を合併した。

 

旧市街地で開かれていた市場

 アッシャーズレーベンの人口推移であるが、1900年には既に27000人ほどあった。その後、徐々に増加していき、第二次世界大戦が終わった翌年の1946年には45000人まで増えたが、それ以降は緩やかに減少していき、ドイツ再統一した1990年には32545人。それからも、上記の周辺自治体の合併をした4年間で3000人強ほど人口は増えたことを除けば人口は一貫して減少傾向にある。ただし、2010年以降は人口の減少率は緩和されている。このアッシャーズレーベン市の都市計画部長に取材をしたので、情報を共有したい。

 アッシャーズレーベンはシュタットウンバウ・オスト・プログラムの最初のプログラムとして2002年に指定された自治体の一つとなった、同市は特に都心部での人口減少が顕著であり、都市の機能喪失が懸念された。同プログラムのコンセプトは「外から中(from the outside in)」。都心部の集積を促すことが目的として設定された。これは、都心部で増える一方であった空き家を改修し、郊外部の団地を撤去・減築することで対応した。都心部の空き家であるが、アッシャーズレーベン市が把握している数字は2008年の24%。シュタットウンバウ・オスト・プログラムが始まる前の2001年は市役所の職員の憶測であるが30%ぐらいだろうとのこと。建物によっては40%のものもあったであろうと筆者が実施した調査では回答している。郊外部の団地は3地区にあり、これらの地区は一貫して人口減少が進み、空き家率が増えている。これらは改修よりも撤去・減築で、そこに住んでいた人たちは都心部へと引っ越してもらっている。基本、同じ住宅会社が所有する物件へと引越をしてもらった。撤去と減築の違いは、都心部に近いものは撤去ではなく減築するようにした。あと、幾つかある入り口を間引きするような形で撤去したものもある。これは屋外空間を増やすためである。市街地の外縁部にあるヘルムート・ヴェルズ・シュトラッセ(Helmut Welz Strasse)周辺の団地は撤去された。このように撤去された地区は二つの後利用が考えられている.一つは既に道路や、社会基盤のネットワークが整備されているメリットを活かして、将来的には戸建て住宅の建物がつくられる計画である。もう一つは緑地に戻すというものである。これらの緑地は周辺の住環境を向上させるという目的でつくられる。

加えて、アッシャーズレーベンはザクセンアンハルトIBA(国際建設展)のプロジェクトにも指定され、また同州の2010年の庭園博の開催地ともなるなど、外部の力を使い、その縮小対策を積極的に展開した。IBAのプロジェクトでは旧市街地の城壁にアクセスする幹線道路のリ・デザイン、そしてブラウン・フィールドの再開発の提案が為された。

IBAの事業では、幹線道路のリ・デザインがなされた

 住宅会社の積極的な投資によって、住宅の質は改善され、また多様なタイプが供給されることによって、旧市街地は居住地としての魅力を向上させた。旧工場をベステホーンパーク教育センターに改修したことで、アッシャーズレーベン市はソフト・サービスも提供できるようになっている。 

旧市街地の住宅はリノベーションが必要とされている

 ただし、将来的には再び空き家が増加することを市役所としては想定しているそうである。ベルリン、ミュンヘン、ハンブルク、フランクフルトのような大都市と地方の拠点都市とは大きな違いがある。なぜなら、今後も人口が減少していくからである。ただし、これは自然減が主な要因となり、社会減ではない。というのもアッシャーズレーベンの社会増減はほぼ同じで、社会減は生じていないからだそうだ。また、現在の家賃収入ではこれ以上の改修は難しい。家の質が悪化したら空き家率はまた高くなるであろう。この空き家率にどのように対抗するか、ということだが、既存の住宅の改善が重要なことになる。これは、旧市街地の建物群がアッシャーズレーベンのアイデンティティであるからだ。そして、そのためには連邦政府や州からの補助金が必要となる。前述したように、家賃収入だけでは不足しているからだ。現在、家賃は1㎡あたり7ユーロから8ユーロが上限である。しかし、改修するための費用は1㎡あたり3000〜3500ユーロほどかかる。このような状況であるから、郊外での住宅を厳しく制限することが必要である。コンパクト・シティをしっかりと維持させるということである。そのため、住宅政策は都心の既存の住宅の改修、もしくは新たに開発するにしても旧市街地内の工場跡地などにおいて実施するべきである。

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