2024-01-24

ワークショップ「津波被災地におけるシュリンキングシティ」を開催しました

2023年11月11日に開催された日本都市計画学会で「津波被災地におけるシュリンキングシティ」というテーマでワークショップを開催しました。

沿岸自治体からは、震災復興に関わり、その後の立地適正化計画にも関わっているお二人の自治体職員をお迎えして現状をご報告いただき、シュリ研メンバーの吉田友彦、岡井有佳、饗庭伸が論点をそれぞれ発表し、論点を議論していきました。

資料の中にある基礎資料は、宮古、山田、大槌、釜石、大船渡、陸前高田の、各種計画の策定状況と人口構造の変化、そして災害後に策定された都市計画マスタープランに掲げられている都市像を読み取って、ざっとまとめたものです。

当日の論点と感想は次のとおりです。

1)新想定へどう対応するか:2022年の3月に、県から「新想定」とよばれる、新しい津波浸水想定が出され「復興したのにまた浸かるのか・・」ということになっています。

会場からは沿岸自治体に対する「往復ビンタ」という表現もありました。当然に立地適正化などにも関わってくる、厄介な問題です。答えがきちんと出たわけではないですが、宮古市では、復興期で市民との対話の関係ができているので、それを使いながら新想定の受け止め方を固めているところ、ということでした。

2)拠点の魅力のつくりかた:市の中心部が低密度化し、どう賑やかにしていくのか・・という、地方都市の普遍的な問題も論点の一つでした。これについては議論を深められなかったのですが、次の3)の論点とあわせて、知恵をしぼっていきたいところです。

3)津波にあっていないところの都市計画:これは弘前大の北原先生から出された論点ですが、復興期に、被害にあったところに当然のように注力された結果、ほったらかしになったところがあります。そこのまちづくりや賑わいづくりをどうしていくか、という論点です。例えば大船渡は、古い盛(さかり)と新しい大船渡の二つの拠点があるのですが、大船渡が3度の津波被害にあい、区画整理や津波拠点で復興したところ。では盛はどうするんだろう、という論点です。他に、特に海沿いではないところの拠点的な集落の今後という問題系はありそうです。

4)密度指標の再構築と合意形成:大船渡ではもうDIDが消滅してしまい、かつての密度指標は見直しを迫られています。立地適正化計画でもDIDと同じ40人/haの密度を採用しているわけですが、はたしてこれは正しいの?全国一律でいいの?という論点です。こういった量的な密度指標でなく、質的な密度指標(なんか寂しんだよねーみたいな指標)があってもよいかもという話もありました。岡井が例示した舞鶴の逆線引きでは、逆線引きの区域を量的な指標で定義しながら、それを住民と合意しながら進めており、都市を縮小するときの手法として密度指標はますます重要になると思います。

5)これからの空き家:吉田からは、高齢者人口の分布から、空き家の発生などを予測し、立地適正化計画に活かしていけばよいのでは、という提起をしました。移転によってつくられた津波被災地の住宅地の場合、通常の高齢化が進んだ住宅地とは異なる振る舞いをするはずで、(例えば高齢者が新築の住宅に住んでいるとか、周辺に親族が住んでいないとか)、この点については知見の集積が待たれます。

6)都市縮小の実行ツール:岩手の沿岸部は、線引きもなく、用途地域による形態規制もほとんど効き目がないので、規制誘導していく都市計画のツールをどうするか、という論点です。この点については使えるようになった災害危険区域や防集を、劇薬にならないように、平時のツールとして使いこなしていくということかもしれません。

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