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坂井市三国

静岡文化芸術大学教授 藤井康幸

坂井市三国町は北前船の寄港地として大いに繁栄した三国湊のまちである。北陸三大祭の一つの三国祭でも知られる。三国港駅を終点とする私鉄は当地に入ってきているものの、JRの路線はない。物流構造の変化した現代においては、歴史と情緒に溢れる町並みに、空き家・空き地問題が発生している。坂井市と地元まちづくり団体の一般社団法人三國會所が中心となり、2013年度に「三國湊町家PROJECT1」が開始され、町家などの空き家を保存・改修・活用が目指された。当プロジェクトは、福井県の進める「ふるさと創造プロジェクト」に採択された事業である。賞金200万円の進呈と1年間の地代免除といった活用者への支援もなされた。空き町家を外観や造作を維持したまま改修され、改修後には、テナントに貸し出されている。三國湊町家PROJECTのウェブページでは、三國湊の海運と文学についてマチノクラ、マチノニワとして改修され利活用された物件を紹介している。不動産の所有関係の変更までは積極的に扱っておらず、その分、利活用が容易になる面があるものと思われる。また、テナントに対して、5年以上にわたり活用することのほか、新しい刺激と魅力になる店舗運営への熱意、町並み保存への意欲、コミュニティづくりへの貢献、地域活動に寄与又は参加などを求めている点が特徴的である。

2014年度には改修された町家にアンティークショップが入居し、町並み景観や伝統的建築物を取り上げた住民ワークショップやSNSによる情報発信がなされた。以降、ポケットパークの整備、古民家のゲストハウスへの改修や倉庫の映像・展示・交流スペースへの改修などがなされている。2016年には、東京大学都市デザイン研究室が、調査報告書「三国まちづくりビジョン」が、空き家にかかる4つの戦略方針(予防、対応、転用、環境向上)を掲げて取りまとめられた。同ビジョンの中で言及されたアーバンデザインセンターが「坂井市アーバンデザインセンター」として2018年5月に設立され、現在では、公・民・学の連携によるまちづくりが進められている。同センターは千葉県柏市で第一号として2006年に開設されたアーバンデザインセンターの流れを汲み、まちづくりに関する情報の集約と発信、実証実験・事業創出、次世代のまちづくりの担い手の育成、歴史的資源の再生によるエリアの活性化などの活動を展開する2。地域の伝統的建築様式であるかぐら建ての築130年、延床面積約180m2の町家を改修し、活動拠点としている。立地的にも町の中心的な場所にあり、かつ、前庭で催しものを開催することもできる。

三国には保存すべき古い建物が多く存在するものの、国の重要伝統的建造物群保存地区の選定は受けていない。かなり広いエリアであり、町全体としての合意形成も難しさがありそうだが、歴史と文化は三国に欠くべからざる資産であり、選定に向けたまちづくりを展開することは検討に値すると思われる。

1 三國湊町家PROJECT(http://mikunikaisyo.org/machiya/)

2 UDCS アーバンデザインセンター坂井ウェブページ(https://udcs.jp)

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