日独シュリンキング・シティセミナー

開催日:2019年10月11日(金)・12日(土)
会場:響都ホール・京都(11日) 、 龍谷大学・深草キャンパス(12日)

目次:
第1セッション:イニシアチブとイノベーション
第2セッション:縮小から再成長へ
第3セッション:概念的課題
セミナー報告

第1セッション:イニシアチブとイノベーション

コーディネーター:𠮷田友彦
発表:大谷 悠、Steffen Praeger、加登 遼
パネル・ディスカッション

議事録(PDF形式):第1セッション:イニシアチブとイノベーション

第2セッション:縮小から再成長へ

コーディネーター:服部圭郎
発表:阿部大輔、Heike Liebmann、Jan Polivka
パネル・ディスカッション

議事録(PDF形式):第2セッション:縮小から再成長へ

第3セッション:概念的課題

コーディネーター:藤井康幸
発表:Katrin Grossmann、黒瀬武史、Thio Lang
パネル・ディスカッション

議事録(PDF形式):第3セッション:概念的課題

セミナー報告

シュリンキングシティ再考——人口変化のパターン・地域での多面性の多層のガバナンス——

報告者:服部圭郎(龍谷大学政策学部)

2019年10月11日(金)、京都駅前の響都ホールにて日本・ドイツの研究者による国際セミナーが開催された。そのテーマは「シュリンキングシティ再考-人口変化の新パターン・地域での多面性と多層のガバナンス」。人口減少は地域的にも時間的にも一直線で類似的ではないことが明確になりつつある。そのような中で、さまざまな地域での多様な縮小の進展状況、その違いが生じる背景、そしてそれらへの対策、を明らかにし、共有することを本セミナーは目的とした。また、本セミナーの日独の代表者・主要参加者が2014年以来、実施してきた共同研究を、セミナー以後も発展させ、シュリンキングシティに関わる国際的な研究ネットワークの構築を進めるための大きな契機となることをもねらいとした。

日本側参加者には、シュリンキングシティに関わる研究を進め、近年博士学位を取得した若い研究者を含め、貴重な研究発表をする経験を提供できることを意図した。また、ドイツ側参加者にも多くの若手研究者が含まれており、将来、これを機に日独での共同研究が展開していくことが期待できるような人選をした。これが、本セミナーの取り組みの特色の一つである。

本セミナーでは次の事項について、成果を得るように留意した。

  • 日独におけるシュリンキングシティに関する研究、政策動向・論点の整理、特にドイツでは移民政策との関連に着目。
  • 日独における人口減少都市や地域の変化する空間形態構造の比較考察。特に、人口集積規模による違いに着目。
  • 日独におけるシュリンキングシティに対する都市計画・都市政策の比較。特に、ドイツのシュタットウンバウ政策の発展と再成長都市の特性や「間にある都市」・郊外のあり方に着目。
  • 空き家・空きビル等の人口減少・都市変化に対応した都市資産の実態と対応策の比較検討。特に公共空間のあり方やジェントリフィケーションに着目。
  • シュリンキングシティに対する多様なガバナンス(公、民、非営利)の事例、実態の理解。特に地域における社会的分断や持続可能性に着目。
  • 今後の研究交流の継続と研究ネットワークの形成への共通理解と体制のありかたなど。

当日は10時30分開演で午前に1つのセミナー、午後に2つのセミナーを行った。午前中のテーマは「シュリンキングシティの形成と展開」で、コーディネーターは立命館大学の吉田友彦教授が務め、武庫川女子大学の嘱託助手である加藤遼氏、ドイツはライプツィヒで「日本の家」というコミュニティ・ハブを仕掛けた東京大学新領域創成科学研究科の博士後期課程の学生である大谷悠氏、そしてドイツはエアフルトでザリネ34という空き家再生事例を成功させたエアフルト市議会議員であるシュテファン・プレーガー氏がパネリストとして発表し、最先端の縮小政策・縮小問題の事例・情報の共有が為された。

午後の最初のテーマは「縮小から再成長へ」でコーディネーターを龍谷大学政策学部の服部圭郎が務め、同じく龍谷大学政策学部の阿部大輔教授、アーヘン工科大学のヤン・ポリフカ准教授、チューネン研究所のアネット・スタインヒューラー研究員がパネリストとして発表し、縮小していた地域が再生の手がかりを得た興味深い事例・情報を発表してくれた。

そして二番目のテーマは「縮小都市における概念的課題」でコーディネーターを静岡文化芸術大学の藤井康幸教授が務め、エアフルト大学のカトリン・グロスマン准教授、九州大学の黒瀬武史准教授、ライブニッツ地域地理研究所のティオ・ラング研究員がパネリストとして発表し、縮小都市において威厳が損なわれるといった仮説の検証など、縮小都市に伴う興味深い課題についての研究発表が為された。

これら3つのセッションから、縮小都市という政策的課題が極めて多彩で、多様な側面での課題を有しており、従来のようなトップダウンでの画一的施策では、あまり効果が期待できないことや、縮小時代においては需要喚起型の政策がほとんど意味を持たず、むしろ新たな価値を創造するようなアプローチこそが有効であることなどが参加者内では共有された。

最後に龍谷大学の白石副学長から閉会の挨拶がなされた。

 10月12日のセミナーの参加者は151名。そのうち、セミナー関係者以外は125名。龍谷大学関係者が52名、立命館大学関係者が25名とパネル・ディスカッションのコーディネーターを務めた二人の所属大学からの参加者が多かったが、それ以外でも48名が参加するなど、総じて盛況であったのではないかと推察される。ドイツ政府の補助金で同時通訳を雇うことができたが、これが一般参加者の増加に寄与したのではないかと考えられる。

 また、当初は翌日の10月12日(土曜日)に名古屋の名城大学なごやドーム前キャンパスでセミナーが予定されていたのだが、台風のために会場が使用できなくなったため中止した。その代わりに、同日に京都の龍谷大学(深草キャンパス)で、一般聴衆無しのワークショップとして、ドイツからの7名の報告を実施した。